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執筆者の写真たかまつなおき

だからこそ、今を生きる

更新日:2023年5月20日

今日ほど、喜怒哀楽・・・、感情に振り回された日はない。


まず、朝のこと。昨夜、思い切り夜更かしをして、惰眠を貪っていたころ。


一通のメッセージが届いた。


わりと頻繁に連絡を取っている人からだったのだが、メッセージを開いて驚いた。


思いもしない、それもかなり重い内容だった。


気休めにもならないような返信しかできなかった。


気を取り直して、いくつか用を済ませ、午後から出かけた。


目当ては、横須賀中央で行われている「リドレ街角ライブ」 仲良くしてもらってるアーティストたちの共演。


一組、残念ながら間に合わなかったのだけど、最後の二組には間に合った。


共通の知り合いが多いので、たくさんの人と言葉を交わすことができた。 コロナ禍に一区切りがつき、戻ってきた街の賑わい、喧噪、そして音楽。 久しぶりの彼らの演奏も素晴らしく、午前中のやりとりを一時忘れられるぐらい。 やはり生の音楽は良いなぁと喜びを感じていた。 全部の催しが終わり、会場は撤収、知り合いたちと楽しく語っていたころ。


一通のメッセージが届いていたことに気付いた。


差出人は、随分と懐かしいお名前の人。 かつて何度かライブでご一緒させて頂いた方。


何事かと開いてみると、差出人は実は彼ではなかった。


彼の奥様が、彼は闘病の果てに、この冬に亡くなったことを報せてくれたのだ。 あまりにも突然の出来事に、文字通り言葉を失い、しばらく動けなくなった。

写真は、イベント最中のもの。 自分では撮った覚えがなく、帰宅してから気付いた。 たまたま間違えてシャッターを押してしまっただけのミスショット。 だけど、偶然写った写真から、空席が何か発信しているような気がした。 その人とは、同じ関東圏に住んでいながら、普段はなかなか会えない距離にいた。


2012年以来、数年に一回、何度かご一緒させてもらえる場があった。

しかし、コロナ禍のため、3年ほどイベントは延期。 先月、主催者からようやくイベントを再開させることの案内が届いた。


そこに、この間に、演奏仲間が鬼籍に入ったという報せも交じっていた。


それがまさか彼だとは思いもしなかった。


久しぶりの出演を決めた自分は、共演者の中に彼の名前を探したぐらいだった。


彼と最後に会ったのは、三年半前。2019年の10月のことだった。


キャリアも実績も十分なその人と違って、自分は少しずつ歩みを進めて来た。


その日、その人は、ぼくの演奏曲を随分と褒めてくださった。


少しは自分も成長しているのだと感じられて、とても嬉しかったのを覚えている。 その時は、まさかその後、Covid-19なんてものに振り回されるとは知る由もなく。


「では、また!」


なんて軽い気持ちで、手を振って別れた。


その日、SNSで何年か越しでようやく個人的に彼と繋がった。


その後、数度のメッセージのやりとり。 結局、それだけの関わりで終わってしまった。 先日、このブログに書いた月の夜の再会とは、実に対照的な出来事となってしまった。


心の整理ができないまま、ゆっくり歩きながら帰路に着いた。


すると今度は、先日の月の夜の彼からメッセージが届いた。


こちらは、生命の息吹の感じられる前向きな内容だった。


ざわつきが治まらない心に、少しだけさわやかな風が吹いた。



そういえば、遠くに住む音楽仲間の訃報に触れるのは二度目だ。


そのときも「So Long!(じゃあね)」という言葉がいかに軽いものか思い知ったのに。


ライブが終わった後に限らず、人と別れる時には、当然挨拶をする。


そのときに、「さよなら」という言葉を自分は滅多に使わない。


と言うか、使ったことがない。


なんだか、二度と会えなくなりそうな言葉で、響きが好きじゃないから。


高校生の頃、中国語でさよならを意味するのが「再見」だと知り。


とても良い言葉だと思ったのを覚えている。


だから、「じゃあね」とか「では、また」とか、そんな再会を期する言葉を選ぶ。


そして、その再会が果たされたとき、とても嬉しく感じる。


だけど、いつかは、その約束が果たされなくなってしまうのだろう。


去年作って以来。


何度も何度も歌っていて、何度も何度も書いてきた言葉。


「行きたいとこは行けるうちに 会いたい人は会えるうちに

 やりたいことはできるうちに 何一つ残さないように

 いつ何があるか分からないから 何があってもいいように

 精一杯 今を生きる 精一杯 今を生きる」


またひとつ、この歌の意味が重くなった。


ありがとう、Tさん。そして、奥様。


ぼくのことを忘れずにいてくれて、連絡を頂けたことに感謝です。


来月、Tさんとのご縁を繋いでくださったイベントに行ってきます。

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