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  • 執筆者の写真たかまつなおき

親父の夢


久しぶりに親父の夢を見た。

不思議な夢だった。

夢っていうものはいつだって不思議なものなのだがしかし。

今朝の不思議さは格別だった。


それは、二度寝した時、ほんの僅かな時間に訪れた。


重篤な病で入院していた親父が、いよいよ危ないと言う報せを受けて。

病棟に向かう。

集中治療室のはずなのに、その部屋の外観は随分とポップだった。

(そもそも自分は集中治療室を見たことがない)


ずっと意識不明だった親父の手を握り締めてみた。

ドラマや映画なんかでよく見るアレ。

そんな気恥ずかしいこと、まさか自分がやるなんて思わなかった。


だって、親父は自分が小5、11歳のとき、不慮の事故で飛んで行ったのだから。

自分が学校に行っている最中に、親父は死んだ。

朝、元気に家を出て行ったはずなのに。


午後、帰りの会の前に担任に呼び出された。

「お父さんが病院に入った」と。

そして、担任の車に乗せられて、帰宅した。 (担任の自家用車に児童を乗せるなど、今ではあり得ないが、それは時代と地域性)


ほどなくして帰宅した親父は、既に亡骸。

変わり果てた…とまでは言わないが、明らかにそれは遺体。

葬儀はもちろん、荼毘に付す瞬間にも立ち会ったし、骨も拾った。

あの時、間違いなく親父の肉体はこの世を去った。


だけど、その後、幾度となく親父の夢を見た。

親父は、肉体を失ったままの姿で。

そして、自分はそれなりに年を重ねた姿で。

会ったときは、「久しぶり」なんて気楽な感じで。

話の内容までは覚えていないけど。

親父が死んでいることは認識しつつも、こうして会うのは当たり前のような感じで。

何の違和感もなく二人で過ごしていた。


自分が成人する頃には、再会の場所は、薄暗い飲み屋の片隅が定番だった。

酒の飲めなかった親父だが、息子と杯を交わすことを楽しみにしていたに違いない。


その前だったか後ろだったか記憶は定かではないのだが。

何時の頃からか、親父は死んだのではなく、ちょっと離れた場所で暮らしていると。

そして、たまに思い出したころに顔を見せる。

そんな感覚になっていた。


改めて確認しておくけど、これは全部夢の話。

たまに見る夢が、途切れ途切れにも関わらず、全部繋がっているような感じ。


夢の中での再会で、どんな話をしたかは覚えていない。

きっと、たわいもないこと、くだらないことに違いない。

だけど、いつしか、親父の夢を見ることはなくなった。


そのきっかけは2012年8月のこと。

お袋を連れて、四半世紀ぶりに親父の故郷を訪れたとき。

不思議な現象があり、そのことがあまりに強烈で自分は歌を作った。

タイトルは、「邂逅・回帰、水先案内人」


その歌は、「もう心配なないと」という言葉で終わる。

親父に向けて放った言葉だ。


それから久しく、親父の夢を見ていなかったのにも関わらず。

その親父の夢を久しぶりに見たのだった。


思い当たるとするならば、先日、7月16日のライブで。

数年ぶりにこの歌を唄ったこと。

そして当時の安定した立場を投げ捨てた今の暮らし。

心配した親父殿を再び呼び戻してしまったのかも知れない。


で、冒頭の夢のシーンに戻る。

意識不明の親父の右手を握った俺。

想像以上に分厚く、温かかった。

ほどなくして、親父が「なおちゃんか」と呟いた。

幼少期、末っ子の自分は家族から「なおちゃん」と呼ばれていた。

もう、今にも危ないと言われていた親父が、みるみる意識を取り戻す。


今の自分の姿を見て、「頭、白うなったな」なんて言う。

ちゃんと見えているらしい。

「うん、立派に白うなったんでよ」

と、淡々と返す自分。

親父がもっと側に来いと言ったところで夢から覚めた。


夢から覚めて思い出した。

自分はこの夢を、ここ最近ずっと観ていた。

はっきりとはしないが、親父が病に伏せている夢はこれが最初じゃない。

だからほんの僅かの間に観た今回の夢にも違和感がなかった。


すっかり成仏したから、もう夢に出てこないと思っていたのに。

今の自分の暮らしに心配かけてしまったかな?

それとも、自分の深層心理が親父の姿を求めてしまったのか。

いずれにしても、不思議な夢だったのだけど、嫌な気持ちはしない。


そして、この夢を見て、自分はまた一つ、決意を新たにするんだ。


写真は、その親父と幼少期の自分。

恐らく撮影者の母であろう指の写っている、怪しいのを敢えてアップ(笑)

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